標準品のスリップリングでは、装置に必要な寸法や電気仕様、通信方式などが合わないことがあります。そうした場合に選択肢となるのが、用途や要求仕様に合わせて設計・調整するカスタムスリップリングです。
カスタムといっても、既存製品をベースに一部の仕様を変更する方法もあれば、用途に合わせて新たに設計する方法もあります。ここでは、スリップリングで変更できる主な仕様や、セミカスタムとフルカスタムの違い、依頼先を選ぶ際のポイントを紹介します。
スリップリングのカスタム範囲はメーカーや製品によって異なります。電気仕様だけでなく、信号・通信、回転条件、寸法などを用途に合わせて調整できるケースもあります。
主なカスタム項目は次のとおりです。
カスタムの可否だけを見るのではなく、自社で必要な電気・通信・機械条件をまとめて満たせるかを確認しましょう。
カスタムスリップリングを検討するとき、必ずしもゼロから専用品を設計する必要はありません。既存製品や既存設計をベースに、一部の仕様を変えるだけで対応できることもあります。
ここでは、既存製品・設計をベースに仕様を変更する方法を「セミカスタム」、要求仕様に合わせて新たに設計する方法を「フルカスタム」として整理します。
| セミカスタム | フルカスタム | |
|---|---|---|
| 基本設計 | 既存製品・設計を活用 | 要求仕様に合わせて設計 |
| 自由度 | 変更できる範囲内で調整 | 高い |
| 向いているケース | 一部の仕様変更で対応できる | 特殊な寸法・性能・使用条件がある |
| 納期・コスト | 比較的抑えやすい | 大きくなりやすい |
たとえば、既存品の寸法や基本構成はそのまま使え、電流や回路数、通信方式だけを変えたいのであれば、セミカスタムで対応できる可能性があります。
一方、設置スペースに厳しい制約がある場合や、複数の特殊な条件を同時に満たす必要がある場合は、フルカスタムが候補になります。
最初からフルカスタムに絞るのではなく、既存設計を活用して要求仕様を満たせないか確認することで、コストや納期を抑えられることがあります。
依頼先を選ぶときは、単に「カスタム対応」と書かれているかどうかではなく、自社が求める仕様にどこまで対応できるかを確認する必要があります。
主に見ておきたいのは、次のポイントです。
特に信号やデータ通信を扱う場合は、「Ethernet対応」「フィールドバス対応」といった表記だけで判断しないほうがよいでしょう。実際に使用する通信規格や伝送速度など、必要な条件まで確認することが大切です。
また、希望仕様をそのまま形にするだけでなく、既存設計を流用できないか、要求性能を保ったまま仕様を簡略化できないかといった提案を受けられると、コストや納期の面でも選択肢が広がります。
依頼先を比べる際は、カスタムできる項目の多さだけでなく、自社の要求を踏まえて適切な構成を提案してもらえるかも確認しておきましょう。
カスタムスリップリングを相談する段階で、詳細な設計図や完成した仕様書までそろっているとは限りません。それでも、用途や必要条件をある程度整理しておけば、メーカー側も対応できるか判断しやすくなります。
相談前には、次のような情報をまとめておくとスムーズです。
スリップリングを選定する際は、電気仕様だけでなく、回転速度、保護等級、寸法、使用温度、寿命なども確認します。カスタムを依頼するときも、「何を伝送したいのか」に加えて、「どのような環境・条件で使用するのか」まで整理しておくと、仕様を詰めやすくなります。
すべての条件が決まっていなくても、現在使っている製品や装置の情報、解決したい課題をもとに相談することはできます。
仕様をすべて固めてから持ち込むより、装置の用途と譲れない条件を整理した段階で相談し、メーカーと一緒に仕様を詰めていくほうが進めやすいケースもあります。
スリップリングは、電流・電圧・回路数といった電気仕様だけでなく、通信方式や寸法、回転速度、使用環境なども用途に合わせてカスタムできる場合があります。
既存製品をベースにしたセミカスタムで対応できるケースもあれば、形状や電気仕様を含めて設計するフルカスタムが必要になるケースもあります。最初から方式を決めつけず、装置の用途や必要条件を整理したうえで相談することが大切です。
電圧・電流・回路数、通信規格、設置寸法、回転速度、使用環境、数量、納期などを整理しておくと、自社の条件に合うメーカーを比較しやすくなります。下記から、スリップリングを取り扱うメーカーと各社の特徴をご確認ください。
メーカーや製品によって異なりますが、電圧・電流・回路数、信号・通信方式、寸法、回転速度、使用環境、ケーブルなどを変更できることがあります。電源・信号・データ通信をまとめたり、ロータリージョイントと組み合わせたりできる製品もあります。
必ずしもフルカスタムにする必要はありません。既存製品や既存設計をベースに、一部の仕様を変更するだけで要求を満たせることもあります。まずは標準品やセミカスタムで対応できないか確認するとよいでしょう。
電源と通信を1つにまとめられる製品はあります。たとえばSchleifringでは、電源とCC-Linkを組み合わせた製品や、電源とEthernetなどを組み合わせた製品が用意されています。対応できる電流や通信規格は製品ごとに異なるため、実際の使用条件に合うか確認が必要です。
スリップリングとロータリージョイントを組み合わせれば、電源・信号・データに加えて、空気・真空・油圧などを回転部へ伝えられる構成もあります。扱う媒体や圧力などの条件を伝えたうえで、対応できる構成をメーカーに確認してください。
詳細な仕様が決まっていなくても、用途や必要条件をもとに相談できるメーカーはあります。使用する装置、伝送したい電源・信号・通信、設置スペース、回転速度、使用環境など、現時点で分かっている条件を整理しておくと、その後の仕様検討が進めやすくなります。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。