産業機械やロボット、各種製造設備において、回転体へ電力や信号を途切れることなく伝送する役割を担うのがスリップリングです。中でも中空一体型スリップリングは、中心に貫通穴を持つ特殊な構造により、限られたスペースを有効活用できる部品として広く導入されています。
近年、製造業においては設備の老朽化や予期せぬダウンタイムを防ぐため、高度な設備保全や設計工数の削減が強く求められています。
参照元:経済産業省 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
本記事では、中空一体型の構造と仕組み、他のタイプとの違いについてわかりやすく解説します。
スリップリングは、固定された部分(ステーター)から回転する部分(ローター)へ、金属製のリングとそれに接触するブラシを介して電気や信号を伝送する回転コネクタです。配線が絡まることなく、360度の連続回転を可能にするのが基本的な特長です。
中空一体型スリップリングは、その名の通り中心軸部分が空洞になっている構造をしています。一般的なスリップリングが軸の中心まで詰まっているのに対し、中空タイプはこの空洞部分にさまざまな要素を通すことができます。
また、「一体型」と呼ばれる理由は、リングとブラシ、そして回転を支えるベアリングが1つのハウジング(外殻)内に組み込まれているためです。これにより、現場でのシビアな隙間調整が不要になり、既存の回転軸にそのまま取り付けることが可能になります。
スリップリングには、中空一体型以外にもいくつかの種類があります。設備の仕様に合わせて適切なタイプを選択することが重要です。
これらに対し、中空一体型は設計や組み込みの手間を省きつつ、シャフトの中間部にも設置でき、配管なども同時に通せるというバランスの良さから、多様な産業設備で重宝されています。
中空一体型スリップリングは、その独自の形状により、機械設計における多くの課題をクリアにします。
大きなメリットは、貫通穴に流体配管やシャフト、光ファイバーなどを通せる点です。これにより、動力の伝達経路と信号の伝送経路を一つの軸上にまとめることができ、装置全体の省スペース化が図れます。
また、部品の統合により、配線の引き回しを考慮する設計工数が大幅に削減される点も利点です。
中空一体型は、多岐にわたる産業分野で活用されています。
設備に合ったスリップリングを選ぶためには、以下の基本項目を整理する必要があります。
まず、通したいシャフトや配管の太さに応じて内径サイズを決定します。続いて、必要な回路数、定格電流・電圧、通信規格を確認します。
さらに、粉塵や水滴が発生する環境であれば、防塵防滴性能(IP等級)を満たした製品を選ぶことが不可欠です。
コストと納期を抑えるには標準品の選定が基本ですが、特殊な高速通信やノイズ対策、特殊環境下での使用が求められる場合は、セミカスタムやフルカスタムが必要になります。早い段階でメーカーへ要件を相談し、自社に適した仕様を見極めることが重要です。
自社で独自にスリップリング機構を設計したり、仕様に合わない製品を選定したりすると、ブラシの早期摩耗やノイズによる通信エラーが発生しやすくなります。結果として、予期せぬ設備のダウンタイムを引き起こすリスクが高まります。
近年では、単に電力や信号を伝送するだけでなく、IoT技術を用いてブラシの摩耗状態や温度を監視し、基幹システムと連携する高機能なシステムが注目されています。スマートファクトリー化が進む中、予知保全は製造業の重要なテーマとなっています。
参照元:経済産業省 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/pdf/honbun01_01_02.pdf
摩耗データを在庫管理システム等と連携させることで、故障する前に予備部品を自動手配する仕組みを構築できます。単なる部品の選定にとどまらず、在庫管理との連携を見据えることが、経営効率化とダウンタイム削減の鍵となります。
| 項目 | 従来型スリップリング | 高機能システム |
|---|---|---|
| メンテナンス | 定期的な目視点検が必要 | センサーによる状態監視・予知保全が可能 |
| 部品手配と在庫管理 | 故障時や定期点検時に手動で発注 | 摩耗状況に応じた自動発注・在庫システム連携 |
| ダウンタイムリスク | 突然の故障による停止リスクあり | 寿命を予測できるため停止リスクを大幅に低減 |
| 経営効率への貢献 | 単一機能のみ | 管理工数の削減と設備稼働率の向上に直結 |
スリップリングの導入においては、単なる部品の交換にとどまらず、予知保全や予備部品の在庫連携を見据えたシステム化が運用負担を大きく軽減します。
専門的な知見を持つメーカーへ相談することで、自社設計のトラブルリスクを回避し、設備の稼働効率向上に直結する適切な提案を受けることが可能です。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。