非接触式スリップリング

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回転する物体に外部から電力や電気信号を、物理的な接触なしに伝える非接触式スリップリング。従来の接触式スリップリングが抱える摩耗やノイズ、メンテナンスの課題を解決できる伝送方式として注目されています。

非接触式スリップリングの特徴や主な用途、製品例、製品を選ぶためのポイントをまとめました。

非接触式スリップリングを
使用するメリット

摩耗しにくいので長寿命

固定部分と回転部分が物理的に接触しない構造を採用している非接触式スリップリング。ブラシやリングの摩耗が発生せず、基本的にメンテナンスフリーでも長寿命を実現できます。

修理が困難な宇宙空間での使用や、長期信頼性が求められる風力発電機、ロボットアームなどの装置においては大きなメリットです。

ノイズが発生しにくい

非接触式スリップリングは、信号品質に悪影響を与える電気的ノイズやチャタリングがほとんど発生しません。ノイズやチャタリングが発生する接触箇所が存在しないためです。Ethernetなどの高速デジタル信号や高精度センサーからの微細な信号を、高い精度で安定して伝送できます。

高速回転や過酷な環境に
対応できる

物理的な制約が少ない非接触式スリップリングには最大5,000rpm、光ファイバータイプでは10,000rpmといった高速回転にも対応できる製品があります。設計の自由度が高いため、幅広い産業機械や装置へ導入可能。高温、多湿、粉塵、水中といった過酷な環境条件下でも安定した性能を発揮できる堅牢性も非接触式スリップリングのメリットです。

ただし、非接触方式は一般的に、大きな電流(数百アンペア級)の電力伝送は困難です。伝送効率が電極間の距離や位置ずれに敏感になりやすいという構造上の課題もあります。初期導入コストが従来型に比べて高くなりがちな点にも注意が必要です。

主な用途例

宇宙産業分野

宇宙空間で使用する装置は修理が困難。装置内部に使われるスリップリングについても長期の信頼性が不可欠です。摩耗がほとんどなく、定期的なメンテナンスが不要な非接触式スリップリングは宇宙産業に貢献しています。

産業ロボット分野

非接触式ならロボットアームやハンドの配線ケーブルの断線や絡まりを回避可能。24時間連続稼働による生産性向上とメンテナンスコスト削減を実現します。

通信分野

非接触式スリップリングはブラシの摩擦や接触不良による電気ノイズが発生しません。高精度な信号伝送や高速データ通信に適しており、通信分野でも使われています。

非接触式スリップリングの
製品例

BN 637424
(SPINNER)

SPINNER
引用元:https://www.comcraft.co.jp/products/spinner/rojo-dcdata.html

回転体を介した非接触式データ伝送と電源供給を1つにまとめたSPINNER社の製品です。

中空シャフト(内径20mm)に対応し、高信頼なリアルタイムEthernetを回転軸越しに通しながら、必要なDC電源をスリップリング経由で供給。

特に「BN 637424C0004」は100BASE-TX(全二重)×1chのリアルタイム通信タイプです。動きのある機構にリアルタイム制御ネットワークを組み込むことが可能になります。

型番BN 637424
Product Category
(製品カテゴリ)
Rotary Joint + Slip Ring (回転ジョイント+スリップリング)
Voltage
(電圧)
Input Voltage Range 21.6 VDC to 28.8 VDC, nominal 24 VDC (入力電圧範囲21.6~28.8V、定格24V)
Current
(電流)
Current nom. (DC): 4 A (Group A, Group B), 6 A (Case ground) (定格電流:グループA=4A、グループB=4A、ケースGND=6A)
Data Transmission
(データ伝送)
Supported: 1000BASE-T, 100BASE-TX, CAN; Real-time Ethernet protocols (PROFINET, EtherCAT, SERCOS III, EtherNet/IP, VARAN, IEEE-1588 v2) (対応:1000BASE-T、100BASE-TX、CAN、各種リアルタイムEthernet規格)
Max. Rotational Speed
(最大回転数)
200 rpm (最大回転数200 rpm)
Rotational Life
(回転寿命)
≥ 20 × 10⁶ revolutions (寿命 2千万回転以上)
Maintenance
(メンテナンス)
Not required (メンテナンス不要)
Housing Material
(ケース材質)
Aluminum alloy (アルミ合金
Surface Finish
(表面仕上げ)
Chromate conversion coat (クロメート皮膜)
Protection Level
(保護等級)
IP60 acc. to EN 60529 (IP60 等級、EN 60529 準拠)
Operating Temperature
(動作温度範囲)
–30°C to +71°C (-30℃~+71℃)
Storage Temperature
(保存温度範囲)
–40°C to +85°C (-40℃~+85℃)
Relative Humidity
(相対湿度)
up to 95% (non-condensing) (最大95%、非結露)
Weight
(重量)
approx. 1.5 kg (約1.5kg)

ROTOCAPシリーズ
(Moog GAT GmbH)

ROTOCAP
引用元:Moog GAT公式サイト https://www.gat-mbh.de/en/products/slip-rings/rotocap/

ドイツのMoog GAT GmbHが開発した「ROTOCAP」シリーズはFANUCバス(FSSB, 150Mbps)用に設計されたモデルです。

100BASE-TX規格に準拠し、100Mbps~2.5Gbpsの高速データ通信(EtherCAT・PROFINET・TCP/IPなど)や映像信号を非接触で伝送できるスリップリングです。非接触データ伝送により、ノイズトラブルを抑えています。

また、ROTOFLUXと一体化させることで電源・信号も伝送可能。データ伝送部と電源伝送部が一体化したハイブリッド構造になります。充填機や風力発電機、回転台などで電力と制御データを同時に安定して供給することが可能です。

対応プロトコルEtherCAT・PROFINET・TCP/IP・SERCOS Ⅲ・MECHATROLINK-Ⅲなど
ビットエラーレート(誤り率)< 1x10-12
レイテンシー(時間遅延)< 2μs
使用温度範囲-40℃~+80℃
供給電源5・12・24VDC
回転寿命非接触部(高速データの伝送部)/ メンテナンスフリー
ピン接触部(電源やアナログ信号などの伝送部)/ 10x108回転(1億回転)
保護等級標準 IP64 / オプション IP65

非接触式スリップリング
選定時の注意点

選定時にまず着目したいのは「伝送距離と位置ズレの許容範囲」です。必要な伝送距離を確保できるか、また回転軸のブレなど実環境で想定される位置ズレに製品が対応できるかを確認します。

「電源部と信号部の電磁干渉対策」も重要です。電源と信号ラインが近いとノイズで通信エラーの原因になります。シールド強化など、ノイズ耐性を高めた設計の製品を選ぶことが安定稼働の鍵です。

「使用プロトコルとの互換性」も確認すべき項目。EtherCATやCC-Linkなど、自社の産業用ネットワークに適合しているか、仕様をチェックしましょう。

カスタム方式の選び方

カスタム設計には「フルカスタム」と「セミカスタム」という二つの方式があり、どちらを選ぶかは装置側の制約条件、予算、開発スケジュールなどのバランスを鑑みての総合的な判断が必要です。

フルカスタム

要件に合わせてゼロから新規設計を行う方式がフルカスタムです。形状や寸法、材料、電気仕様などにおいて高い自由度を持ち、厳しい要件にも対応できます。

一方で、新規設計開発が必要となるため、コストが高く、納期も長くなりがちなのはデメリットです。

セミカスタム

スリップリングメーカーが提供する既存の標準設計や筐体プラットフォームをベースにして、一部の仕様を調整する方式がセミカスタムです。既存品の構造を維持しつつ、内部のリング数や電流容量の組み合わせ、リード線長さ、コネクタ形状などを変更するのはセミカスタムに該当します。

既存設計を流用するため、開発工数が抑えられ、一般的にフルカスタムより低コストで、納期も短めです。

近年ではセミカスタム設計の効率化が進んでおり、仕様調整や図面確認がしやすい製品が増えています。モジュール化やパラメトリック設計により、顧客がウェブサイト上で仕様選択するだけで必要寸法を自動算出できたり、CADデータや簡易図面が迅速に提供されたりするサービスも登場。カスタム品の導入検討がよりスムーズに行えるようになっています。

接触式か、非接触式か?
判断の分かれ目となる
3つのポイント

大きな電力を
伝送するなら接触式

大きな電力伝送は、今も昔も接触式の独壇場です。カーボンブラシなどを用いたスリップリングは、シンプルかつ確実に大電流を流すことができます。重機や風力発電、大型の製造装置などでは、接触式が唯一の選択肢となる場合がほとんどです。

非接触式で電力を送るには「電磁誘導方式」が用いられますが、伝送できる電力は数W〜数100W程度が限界です。AGVの充電や小型センサーの駆動には十分ですが、大きなモーターを動かすには力不足です。光通信方式や静電容量方式などの非接触式は、電力伝送には使えません。

データ伝送の速度・安定性を
重視するなら非接触式

データ伝送は非接触式の得意分野です。物理的な接触がないため、摩耗によるノイズやチャタリングが原理的に発生しません。非接触式の中でも、ノイズ耐性を重視するなら超高速の「光通信方式」、産業用ネットワークなら高速の「静電容量結合方式」が有効です。

接触式でも金接点などを用いた信号伝送は可能ですが、超高速回転時や寿命末期にはノイズが増加するリスクが常に伴います。

運用コストを
重視するなら接触式

接触式スリップリングは技術として成熟しており、製品価格が安く、選択肢も豊富です。ブラシは消耗品ですが、交換を前提とした設計になっており、予測可能なメンテナンス計画を立てやすいのがメリット。

非接触式の場合、摩耗がないため回転寿命は半永久的です。ただし、内部に電子回路などを搭載するため初期コストが非常に高価になります。故障した場合はユニット全体を交換する必要があり、突発的なコストは高くなる可能性があります。

まとめ
摩耗レスだが不得手もある、非接触式を選ぶ価値

非接触式スリップリングは、接触部がないため摩耗粉やチャタリングが発生しにくく、長寿命・メンテナンスフリー・高い信号品質を実現します。高速回転や高温・多湿・粉塵環境にも適応でき、宇宙機器・産業ロボット・高速データ通信などで効果を発揮します。

一方で大電流伝送は不得手で、位置ズレや電磁干渉への配慮、初期コストの高さが課題。導入時は〈必要電力と伝送方式(光/静電容量/電磁誘導)〉〈許容位置ズレ・伝送距離〉〈使用プロトコルの互換性〉を確認し、標準品で足りない場合はセミ/フルカスタムを検討しましょう。

このメディアでは、設計者が条件に合う依頼先を見極められるよう、メーカー各社の強みを整理して紹介しています。

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他社ではフルカスタム
となる仕様でも

短納期・低コスト
協栄電機
協栄電機公式サイト画像
画像引用元:協栄電機公式HP(https://www.kyoeidenki.jp/)
代表的な
スリップリングの型
  • 中空一体型
  • 中空分離型
  • 軸端一体型
協栄電機画像
特注級の要件を
セミカスタムで対応できる

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。

ノイズ対策・寸法調整も
1台から対応可能

「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

計測向けの軽量・
低トルク仕様を

標準品でラインナップ
遠藤工業
                           遠藤工業公式サイト画像
画像引用元:遠藤工業公式HP(https://www.endo-kogyo.co.jp/japanese/product/slipring/index.html)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • 軸型
  • 中空型
  • SR型
遠藤工業公式サイト画像
小型計測機器向けを
標準品で提供

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。

計測精度を損なわない
軽量・低トルク仕様

余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

数百Aの大電流とGb/s級の
データを伝送できる

大口径を提供
日本ムーグ
                           日本ムーグ公式サイト画像
画像引用元:日本ムーグ公式HP(https://www.moog.co.jp/)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • コンパクトタイプ
  • 大型
  • 中空型
日本ムーグ公式サイト画像
CTガントリにそのまま収まる
内径1,397mmの大口径サイズ

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。

Gb/s級画像データを
同軸で一体伝送できる
数百Aの大電流対応

最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。

     

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