大量の電流を必要とする厳しい要件において注目され、電気モーター、自動化機械、軍事機器などの高出力システムで不可欠な役割を果たすのが大電流対応のスリップリングです。
大電流スリップリングの特徴、主な用途、製品例、自社に適した製品を選ぶための導入のポイントを紹介します。
大電流対応のスリップリングは、発熱や接触抵抗を抑えつつ大電流を安全に伝送できるように設計されています。風力発電機の回転部(ナセルとブレードの間)で発電された電力を、効率的に取り出せるのはメリットです。
水力発電やタービン発電設備の回転軸部分でも、数百アンペア規模の電力を安定的に伝送できます。
発電プラントをはじめとする「24時間365日稼働」が前提の現場では、ダウンタイムの最小化が必須。摩耗や発熱を抑える設計がされた大電流対応スリップリングは、長期間にわたって安定した動作が可能です。
送配電設備の回転機構を持つ部分における定期メンテナンス間隔を延長できるため、保守コスト削減にもつながります。
大電流を安定的に伝送できることは、発電所や重電機器全体の安全性に直結する要件です。大電流対応スリップリングには短絡や過熱リスクを低減する設計が施されており、システム全体の信頼性が高まります。
風力エネルギーシステムでは、回転するブレードから固定部分へ効率的に電力を送るために大電流対応のスリップリングが使われます。
重工業機器、特にクレーンや掘削機のような機械では、回転部分への確実な電力供給を可能にし、安定した動作を支えるのが大電流スリップリングです。
電気自動車の充電ステーションのリールシステムにおいても、安全かつ効果的な電流伝送に貢献。自動車産業ではステアリングシステムに大電流スリップリングが使われる場合もあります。
3,000万回転以上の長寿命と、メンテナンスフリーを実現しているRCK420。-10℃から+80℃の広い温度範囲でも安定して使用できます。めっき装置や溶接機といった回転装置の接地用途に適したスリップリングです。協栄電機は標準品を基にしたセミカスタムにも対応しています。
| 製品カテゴリ | 水銀フリー |
|---|---|
| 極数 | 4 |
| 許容電圧 | AC/DC 200V |
| 許容電流 | AC/DC 20A/5A |
| 許容回転数 | 1500rpm |
| 回転トルク | 0.5cN・m |
| 回転取付方向 | 水平/垂直 |
| 回転方向 | CW-CCw インデックス |
| 使用本体温度 | -10~+80℃ |
オープンタイプの大電流用スリップリングとして設計されており、最大20Aの許容電流に対応できるSPO-20A。標準で3極から12極までの構成を用意しています。定格電圧はAC600Vで許容回転数は60rpmです。
SPO-20Aシリーズ以外にも、ヒカリ電子工業は個別用途に応じた特殊仕様品を設計・製造。高電流(3,000A超)や多極数(200極以上)など、多様なカスタムニーズに対応しています。
| 製品カテゴリ | - |
|---|---|
| 型式 | SPO-20A-□P(□内:極数) |
| 極数 | 3・4・6・8・10・12P |
| 絶縁抵抗値 | DC500V, 10MΩ MIN |
| 絶縁耐力 | AC2200V, 1分間 |
| 絶縁抵抗 | DC500V,100MΩ以上 |
| 絶縁耐力 | AC500V,1分間 |
| 定格電圧 | AC600V |
| 回転方向 | CW−CCW(両方向) |
| 機械的回転角 | 360°エンドレス |
| 許容回転数 | 60rpm以下 |
| 使用温度範囲 | −10℃~+50℃ |
| その他 | 極数:32Pまで対応可能 取付軸径:φ57・φ80タイプ有り |
耐圧防爆仕様のTD-9108。IEC60079をはじめとする規格におけるZone1/Zone2の危険場所下での使用が可能。Zone1は通常運転時に爆発性雰囲気がしばしば存在する可能性がある場所、Zone2は異常時に短時間だけ発生する可能性がある場所です。
AC240V・最大15A(一部端子5A)の電源および信号回線を、水銀接点を介して360°連続回転接続できます。アルミニウム合金の筐体で耐久性を確保。ロボットアーム、タービン試験装置、メッキ装置など、ハザードエリアでの動力・信号回転接続やロータリーアース用途に適しています。
| 型番 | TD-9108 |
|---|---|
| 型式検定合格番号 | 第TC14344号 |
| 定格電圧 | AC240V 50/60Hz |
| 定格電流 | 15A(一部5A) |
| 接触抵抗 | |
| 電流値 | 1mΩ(MAX.) |
| 極数 | 8極 |
| 使用温度 | -10~40℃ (氷結不可) |
| 使用湿度 | 35~85%RH(結露不可) |
| 最大回転数 | 10rpm |
| 重量 | 約10kg |
| 材質 | アルミニウム合金鋳物製 |
| 取り付け方向 | 水平から垂直 (保存時は、垂直のこと) |
| 口出しケーブル | CVV2SQ10C |
| 適応引き込みケーブル | 仕上げ外径14.0mmを越え16.0mmまで |
選定の際には、要件が標準品で満たせるかどうかに注意が必要。一般的な電流容量、数極から数十極までの極数、数百rpm程度の回転速度、標準的なサイズであれば、多くのメーカーの標準品で対応可能です。
しかし、極端に大きなまたは小さな寸法、100極を超える高極数、数百アンペア級の超大電流といった厳しい条件には標準品では対応しきれず、カスタム設計が必要になる場合があります。
カスタム設計は大きく分けて「フルカスタム」と「セミカスタム」の二方式。どちらを選ぶべきかは要件や納期、コストなどを考慮して総合的に判断する必要があります。
特定の要件に合わせてスリップリングをゼロから完全に新規設計するのがフルカスタム方式です。形状・寸法・極数配列・使用材料・電気仕様など、あらゆる点において自由度の高い方式で、厳しい要件にも対応できます。
一方で新規の設計作業や試作、評価が必要となるために開発コストが高くなり、製品の提供までにかかる納期も長くなりがちです。
スリップリングメーカーがすでに持っている標準設計品や既存の筐体を基盤として、仕様を調整する方式がセミカスタム。基本構造や寸法は既存品に準拠させつつ、内部のリング数、電流容量の組み合わせ、リード線の長さ、コネクタの形状といった特定の箇所を変更することで要件に合わせます。
既存設計を流用するため、開発にかかる工数を抑えられ、フルカスタムに比べてコストが低く、納期も短くできるのがメリットです。
近年では、モジュール化された設計やパラメトリック設計の導入が進み、仕様調整がより容易になりました。ユーザーによる設計内容の事前確認も手軽に行えます。
セミカスタムを依頼するハードルが低くなってきていると言えるでしょう。
大電流対応スリップリングは、回転部と固定部の間で大量の電力や信号を安定伝送し、高出力システムの効率運用や装置の長寿命化に貢献します。発電設備や重工業、車載用途などで欠かせない存在です。
一方で、発熱や摩耗といった課題もあるため、材料選定や放熱設計など高度な技術が不可欠。選定時には、定格条件や環境、スペース制約、予算を踏まえ、標準品・セミカスタム・フルカスタムを含めて総合的に判断することが重要です。
このメディアでは、設計者が条件に合う依頼先を見極められるよう、メーカー各社の強みを整理して紹介しています。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。