産業用ロボット向けスリップリングの役割・活用事例

産業用ロボットの高性能化が進む中、回転部での電力・信号伝送を担うスリップリングの重要性が高まっています。この記事では、その基本的な役割から特徴、具体的な活用事例、さらに選定時のポイントまでをわかりやすく解説します。導入検討に役立つ基礎知識を整理します。

産業用ロボットにおけるスリップリングの役割とは?

産業用ロボットにおけるスリップリングは、回転する部分と固定された部分の間で電力や信号を途切れなく伝送するための部品です。特にロボットアームの関節部では、360度の連続回転が求められる場面が多く、通常の配線ではケーブルがねじれて断線するリスクがあります。スリップリングを使用することで、回転中でも安定した通電・通信が可能となり、装置の信頼性やメンテナンス性を向上させます。長時間の自動運転や高精度な動作を支える重要な部品です。

産業用ロボット用のスリップリングの特徴

高速データ通信への対応とノイズ対策

産業用ロボット向けスリップリングは、Ethernetや各種フィールドバスに対応し、大容量のデータを遅延なく安定して伝送できるよう設計されています。センサー情報や制御信号をリアルタイムでやり取りし、高精度な動作を実現可能です。また、回転部で発生しやすい電気的ノイズから微小な信号を守るため、シールド構造やノイズ低減技術が採用されています。通信エラーを防ぎ、ロボットの安定稼働と品質維持に貢献します。

限られたスペースに収まる「小型・軽量設計」

ロボット関節部などの限られたスペースに組み込めるよう、小型・軽量設計が重視されています。コンパクトな構造により、装置全体の設計自由度を高め、狭小部への実装にも柔軟に対応可能です。また、軽量化はロボットアームの慣性を低減し、動作スピードの向上や消費エネルギーの削減にも寄与します。高速かつ効率的な動作を実現しつつ、装置全体のパフォーマンスを向上する設計です。

過酷な環境に耐えうる高耐久性

産業用ロボット向けスリップリングには、粉塵やオイルミストが飛散する工場環境、さらには振動や衝撃が繰り返される過酷な条件下でも安定して動作する高い耐久性が求められます。そのため、防塵・防油構造や耐振設計、摩耗を抑える接点材料などが採用されています。長期間にわたり性能を維持し、故障やメンテナンス頻度を低減。ランニングコストの抑制と安定稼働の両立に貢献します。

【用途別】産業用ロボットでのスリップリング活用事例

多関節ロボット・ピッキングロボットでの活用

多関節ロボットやピッキングロボットのアーム先端(ハンドツール)へ電力と信号を供給する際、従来はケーブルによる配線が一般的でしたが、回転動作に伴うケーブルのねじれや断線が稼働率低下の要因となっていました。そこで回転体への連続給電を可能にするスリップリングを関節部に導入。アームが360度制限なく連続回転できるようになり、逆回転による「ねじれ戻し」の待機時間が解消されました。サイクルタイムの短縮と断線トラブルによる突発停止の防止が実現し、装置の稼働効率が大幅に向上しています。

参照元:スリップリング.com( https://slipring-japan.com/media/case/a33

溶接ロボット・塗装ロボットでの活用

溶接工程では、溶接ガンの駆動や火花を飛ばすために数百アンペア規模の大電流を安定して伝送する必要があります。溶接ロボットでの活用として、スリップリングを関節部に組み込むことで、ケーブルの捻じれを防ぎながら、高負荷な電力供給と制御信号の同時伝送を実現しています。

塗装ロボットとしては、防爆エリアや粉塵が舞う特殊環境下での稼働に活躍。高度な密封構造を備えたスリップリングが、シンナー等の溶剤や塗料の侵入を防ぎ、信号の瞬断やノイズを抑えた安定稼働を支えています。

参照元:スリップリング.com( https://slipring-japan.com/media/case/a33

産業用ロボット向けスリップリングの選び方

極数(回路数)と定格電流・電圧の確認

極数は電力線や信号線の本数に対応するため、現場から提示される仕様書で「何系統の電力・通信を通すか」を整理し、不足がないかを確認します。回路ごとの定格電流・電圧が実際の使用条件を満たしているかも重要なポイントです。特にモーター駆動やヒーターなど大電流が流れる回路は余裕を持った選定が必要で、過負荷による発熱や故障を防ぐためにも適切なスペック確認が欠かせません。

設置箇所に合わせた形状の選定

スリップリングは設置箇所に応じて適切な形状を選定することが重要です。代表的なものに、中心部に穴がありシャフトや配管を通せる「中空タイプ」と、小型で省スペース設計の「カプセルタイプ」があります。中空タイプはロボット関節部でエア配管や光ファイバーと併用する場合に適しており、複合的な配線・配管をまとめられる点が特長です。一方、カプセルタイプは限られたスペースに収めたい装置に有効で、比較的シンプルな構成に向いています。用途や設置条件に応じた形状選定が重要です。

納期・サポート体制とメーカー選定のポイント

メーカー選定では、納期とサポート体制の確認が重要です。海外製はコスト面で有利な場合がありますが、納期の長期化やトラブル時の対応に時間がかかることがあります。一方、国内製は価格が高めでも短納期や迅速な技術サポートが期待できます。相見積もり時にチェックしたいのは次の4点です。

  • 納期・在庫状況
  • 技術相談やカスタム対応の可否
  • 故障時の修理・交換体制
  • 実績や導入事例の有無

導入後のリスクを抑えた選定が可能になります。

まとめ

スリップリングは、ロボットの回転部と固定部間で電力や信号を断線なく伝送する重要部品です。360度の連続回転を可能にし、配線のねじれを防ぐことで装置の信頼性を高めます。

主な特徴は、高速データ通信への対応、省スペースな小型・軽量設計、そして工場等の過酷な環境に耐える高耐久性です。多関節ロボットや溶接・塗装ロボットに導入することで、サイクルタイムの短縮やメンテナンス性の向上が実現します。選定時は、回路数や定格、設置箇所に応じた形状(中空・カプセル型)、メーカーのサポート体制を確認することが重要です。

まとめ
産業用ロボット向けスリップリング選びのポイント

産業用ロボット向けスリップリングは、「どのロボットに」「どんな環境で」使うかによって求められるスペックが大きく異なります。
精密な制御や高速データ通信が必要ならノイズ対策が施された製品が有効で、特に関節部などの限られたスペースに組み込むなら小型・軽量設計が適しています。

溶接や塗装など過酷な現場で使用する場合は高耐久仕様が必須。長寿命化により、現場のメンテナンス負担を大幅に軽減できます。

また、現場の細かな要件(極数・形状・ケーブル指定など)を満たすなら規格品よりも特注がおすすめ。専門知識に不安があるご担当者様でも、実績豊富な専門メーカーに相談することで提案してもらえます。

自社ロボットの用途や環境条件を整理し、サポート体制の整ったメーカーへ相談することが、確実な部品調達と安定稼働のポイントです。

RECOMMENDED
【メーカーの強みから選ぶ】
スリップリング
メーカー3選

スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

他社ではフルカスタム
となる仕様でも

短納期・低コスト
協栄電機
協栄電機公式サイト画像
画像引用元:協栄電機公式HP(https://www.kyoeidenki.jp/)
代表的な
スリップリングの型
  • 中空一体型
  • 中空分離型
  • 軸端一体型
協栄電機画像
特注級の要件を
セミカスタムで対応できる

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。

ノイズ対策・寸法調整も
1台から対応可能

「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

計測向けの軽量・
低トルク仕様を

標準品でラインナップ
遠藤工業
                           遠藤工業公式サイト画像
画像引用元:遠藤工業公式HP(https://www.endo-kogyo.co.jp/japanese/product/slipring/index.html)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • 軸型
  • 中空型
  • SR型
遠藤工業公式サイト画像
小型計測機器向けを
標準品で提供

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。

計測精度を損なわない
軽量・低トルク仕様

余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

数百Aの大電流とGb/s級の
データを伝送できる

大口径を提供
日本ムーグ
                           日本ムーグ公式サイト画像
画像引用元:日本ムーグ公式HP(https://www.moog.co.jp/)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • コンパクトタイプ
  • 大型
  • 中空型
日本ムーグ公式サイト画像
CTガントリにそのまま収まる
内径1,397mmの大口径サイズ

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。

Gb/s級画像データを
同軸で一体伝送できる
数百Aの大電流対応

最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。

     

【メーカーの強みから選ぶ】

スリップリング
メーカー3選