スリップリングとは回転する装置と固定された装置の間で、電力や電気信号を安定して送るための回転コネクタのことです。ケーブルの絡まりや断線の心配なく、自由な回転運動をともなうシステムの設計や運用が可能になります。
スリップリングのタイプごとの構造や仕組み、選び方のポイントなどをまとめました。
回転する部分と固定された部分との間で電気的な接続を保つための部品がスリップリングです。回転体に取り付けられた複数の金属製「リング」と、リングに常に接触する「ブラシ」で構成されています。
リングが回転してもブラシは常に接触している状態になるので、電気や信号が途切れることはありません。回転運動をする部分を持つ装置においても、スリップリングが安定して電気や信号を伝えてくれます。
ロボットアームや監視カメラ、検査装置、風力発電機、産業機械などにおいて、装置へ電力を供給したり、センサーからの微細な信号を伝送したりするのがスリップリングの役割です。スリップリングによって、配線の制約から解放された自由な機構を構築できるようになります。
中心に貫通した穴(空洞)を持つ構造が特徴です。空洞部分には、油圧や空気圧の配管、光ファイバーケーブル、さらには別の回転軸などを通せます。限られたスペースで複数の機能を統合したい場合に有効な構造です。
電気伝達部分と回転軸の中空構造が一体化された設計のため、装置の既存の回転軸や空間をそのまま利用できます。スリップリングのためだけの専用シャフトを設計する必要がありません。取り扱いが比較的簡単で、装置の中心部に組み込みやすいというメリットがあります。
多くの産業用途で広く採用されている汎用的な構造で、装置のコンパクト化や省スペース化に貢献します。ただし、メーカーごとに対応できる極数・電流値・カスタム範囲が異なる点には要注意です。
中空構造を持ちながらも、回転する部分(ローター)と固定される部分(ブラシブロック)が独立して分離できる構造です。
分離可能な構造は特に設置スペースに厳しい制約がある場合や、将来的なメンテナンス、部品交換のしやすさを重視する場合にはメリットとなります。一体型に比べて部品を個別に組み込んだり、取り外したりすることが容易になるためです。
長期的な運用を見据えた装置や、定期的な点検・交換が必要な装置に適しています。たとえば、ブラシの摩耗による性能低下が予想される場合、分離型であればブラシ部分だけの交換が手軽に可能です。
回転するシャフトの末端に直接取り付けて使用する形式です。装置の外側に設置されることが多く、内部に中空の経路を必要としない構造の装置に適しています。
設計の自由度が高いのが軸端一体型の特徴。特に省スペースで、かつ取り付けや取り外しが容易な設計が求められる場合に採用されます。
装置の内部構造に干渉せず、後付けでコンパクトに設置可能。設計変更の手間が抑えられます。
外部に設置されることが多いため、メンテナンス作業がしやすいのもメリット。シンプルさと運用性を重視した設計思想の装置にフィットします。
ここまで紹介したほかにも、モジュール型や分割リング型など、用途や設置条件に合わせた構造があります。
従来のスリップリングの一部には導電媒体として水銀が使用されていました。しかし、水銀は有毒な性質を持つため、健康や環境への懸念があります。
水銀フリースリップリングは、主に金・銀・銅・グラファイトなどの固体導電材料を使用。水銀を使用しないため、環境負荷を低減し、作業者の安全性を向上させています。
水銀を使わない設計は、固体導電材料を採用しているため、液体媒体の封止構造が不要で、漏れの心配がほとんどありません。
堅牢で信頼性の高い運用が可能です。また、固体接点の工夫次第では、接触部の摩耗を少なくして長寿命化したり電気的ノイズを低減したりできます。
医療機器やクリーンルーム内の装置、あるいは食品製造装置など、高い安全性と清浄度が求められる環境や、厳しい安全基準が適用される装置に特に適しています。
スリップリングの構造は「どの装置に」「どんな目的で」使うかによって最適解が変わります。
中心部に配管や光ファイバーを通すなら中空一体型や中空分離型が有効で、特に交換性や保守性を重視するなら分離型が適しています。
コンパクトに末端へ取り付けたい場合は軸端一体型が有効。外側設置で後付けしやすく、省スペース性やメンテナンス性を高められます。
また、クリーン環境や環境負荷低減を重視するなら水銀フリースリップリングを選択。医療・食品・精密分野など安全基準の厳しい現場で安心して利用できます。
各構造の特性を理解し、用途や環境条件に合わせて選定することが、装置の性能と信頼性を高めるポイントです。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。