環境規制への対応と高性能化を両立する水銀フリースリップリング。従来の製品が抱えていた水銀漏洩のリスクや環境負荷といった課題を克服しつつ、低ノイズ、長寿命、メンテナンスフリーといった特徴も併せ持ちます。
スリップリングにおける水銀フリーを実現する手法は下記の2つです。
このページでは主に非水銀系の液体金属式のスリップリングのメリット、用途、製品例、製品を選定するためのポイントについてまとめています。
RoHS指令や水俣条約といった国際的な環境規制に適合し、環境への配慮が求められる現代において水銀フリースリップリングは見逃せない選択肢です。廃棄する際には通常の産業廃棄物として処理できる場合も※あります。廃棄コストの削減にも貢献してくれるのが水銀フリースリップリングのメリットです。
※処理区分は地域の法令・社内基準に従ってください
水銀を用いたスリップリングの場合、液体の性質を水銀が保てる温度範囲に使用が限定されます。水銀フリースリップリングならより広い温度範囲でも安定して作動させることも可能。
代替となる液体金属や潤滑材によって動作温度は異なりますが、-20℃~+80℃程度の範囲での作動も実現できます。特殊な温度環境下でも安定稼働を実現できるのはメリットです。
水銀を通すための空間が不要な水銀フリースリップリングは、製品を小型化しやすい構造です。限られたスペースへの導入に適しています。
多岐にわたる分野で活用されている水銀フリースリップリング。環境規制により水銀使用が厳しく制限される中で、既存の水銀タイプの代替としての導入も進んでいます。
半導体製造装置では、高周波電流の安定した通電や精密な信号伝送が求められます。水銀フリースリップリングは、接触抵抗が極めて小さく、ノイズが生じにくいため、微細な信号の安定伝送や高周波電流の通電に適した構造です。
水銀を使用しないため、万が一の破損時にも食品などへの有害物質の混入リスクが少なく、安全性を確保できるのが水銀フリースリップリング。回転側と固定側の間に水銀が用いられていない構造上メンテナンス頻度を抑えられるので、生産ラインの停止時間も減らせます。
産業用機器では電力供給や微細な信号の取り出しに加え、長寿命と、メンテナンス頻度を抑えた運用が強く求められます。水銀フリースリップリングは、ファイバーブラシ(細い繊維を多数束ねた構造を持つ接点ブラシ)をはじめとする技術により摩耗粉の発生を抑制可能。長期間のメンテナンスフリーを実現します。
医療・検査装置では、限られたスペースにおける高精度な動作と、低ノイズでの信号伝送が不可欠です。水銀フリースリップリングは、水銀は封入するための空間が不要なので小型・コンパクト設計にしやすい構造。複数接触点を並列にすることで、低ノイズで安定した信号伝送も可能にします。医療・検査装置分野にも適した性質です。
有害物質である水銀を一切使用しない4極タイプのロータリーコネクタ「RCK420」。20A/5Aの4極仕様で、ヒーターや熱電対の用途にも使用可能です。RoHS2指令に適合しており、メンテナンスフリーでの運用もできます。許容回転数は1,500rpm。包装機械をはじめとする産業用機械に適した製品です。
協栄電機は、標準品をベースにセミカスタムの要望にも柔軟に対応しています。
| 製品カテゴリ | 水銀フリー |
|---|---|
| 極数 | 4 |
| 許容電圧 | AC/DC 200V |
| 許容電流 | AC/DC 20A/5A |
| 許容回転数 | 1500rpm |
| 回転トルク | 0.5cN・m |
| 回転取付方向 | 水平/垂直 |
| 回転方向 | CW-CCw インデックス |
| 使用本体温度 | -10~+80℃ |
1極、電流10Aタイプの標準品で、条件によっては20A程度まで通電が可能なHRC-1-10。ヒサワ技研独自の技術で製作されたスリップリングで、ローラーベアリングのような構造で安定した回転通電を実現します。
社内試験ではメンテナンスなしで3億回転以上を達成。低ノイズ、低回転トルク、長寿命といった水銀フリースリップリングならではの特徴も持ち、高周波電流にも対応可能です。
ヒサワ技研は、要求仕様に合わせて1台から柔軟に設計製作に対応しています。
| 型番 | HRC-1-10 |
|---|---|
| 極数 | 1 |
| 許容電流 | 10A |
| 回転方向 | CW-CCW |
| 許容回転数 | 1000rpm |
| 取付方向 | 任意 |
水銀フリースリップリングの選定においては、多くの一般的な要件であれば標準品で対応可能です。例えば、極数が数十極以内、電流容量がせいぜい20A程度まで、直径や長さが規格内、環境条件が常温常圧程度であれば、既製品またはその組み合わせで対応可能。
しかし、極端な寸法制約があったり大電流に対応する必要があったりなど、特殊な条件下ではカスタム設計が必要になります。
使用される液体金属の種類によっては、ガリウム合金のように凝固点が比較的高く(4℃~8℃)低温環境での使用に制約があったり、金属との反応性により凝固点変化が起きたりといったことも。水銀の代わりにどんな液体金属が使われており、どのような性質を持つのかには要注意です。
カスタムには「フルカスタム」と「セミカスタム」という二つの方式があり、どちらを選ぶべきかは、装置側の要件やコスト、数量、開発スケジュールといった要素のバランスを総合的に考えての判断が必要です。
要件に合わせて新規にゼロから設計する方式です。形状・寸法、極数配列、使用材料、電気仕様など、さまざまな点で自由度の高い設計ができます。
しかし、新規図面作成や試作評価が必要になり、コストが高く、納期も長くなりがちです。
スリップリングメーカーに既にある標準設計・筐体プラットフォームをベースにして、仕様を調整する方式がセミカスタムです。たとえば、基本構造や寸法は既存品に準じ、内部のリング数や電流容量の組み合わせ、リード線長さ、コネクタ形状などをカスタマイズできます。
既存設計を流用するため開発工数が抑えられ、フルカスタムよりコストが低く、納期も短めなのが一般的です。
近年では、モジュール化やパラメトリック設計により、図面確認や仕様調整がしやすいセミカスタム製品も増えています。
水銀フリースリップリングは、RoHSや水俣条約に適合しつつ、低ノイズ・長寿命・メンテナンスフリーを実現。固体接触式や非水銀系の液体金属式により、小型化や広い動作温度範囲(例:−20~+80℃クラス)にも対応でき、半導体装置や食品・包装、医療機器、ロボットなどで水銀タイプの代替として有効です。
一方で、液体金属の種類によっては低温時の凝固や材料反応性、振動対策が設計上の検討ポイント。まずは要求極数・電流値・寸法・環境条件で標準品適合を確認し、満たせない場合はセミ/フルカスタムで最適化を検討しましょう。選定時は「方式(固体接触/液体金属)」「温度・ノイズ性能」「保守計画と廃棄コスト」を総合評価するのが近道です。
このメディアでは、設計者が条件に合う依頼先を見極められるよう、メーカー各社の強みを整理して紹介しています。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。