スリップリングを使用していると、センサー値の乱れや通信エラー、信号の瞬断などが起こることがあります。原因はブラシとリングの接触状態だけではありません。摩耗粉や使用環境、配線、周辺機器からの電磁干渉など、複数の要因が関係します。
なお、製品仕様に記載されている「電気的ノイズ」は、音や電圧の大きさを表すものではなく、回転中に生じる接触抵抗の変動を指すのが一般的です。数値はmΩで示される場合があります。本記事では、スリップリングにノイズが発生する原因と確認方法、低減するための対策を解説します。
一般的なスリップリングは、固定側のブラシを回転側のリングに接触させ、電力や信号を伝えます。回転に伴って接触面の状態や接触圧がわずかに変化すると、接触抵抗も変動します。
この変動が信号回路に影響すると、測定値の乱れや電圧変動、通信エラー、瞬断などが起こります。特に熱電対やセンサーが扱う微小信号は、わずかな抵抗変動でも影響を受けやすいため、製品仕様に記載された電気的ノイズや動的接触抵抗を確認しましょう。
モーターやインバーター、スイッチング電源などから発生した電磁ノイズが、信号線へ入り込むこともあります。同じスリップリングで電力と信号を伝送する場合は、回路間の電磁結合によってクロストークが生じる可能性もあります。
スリップリングを交換しても症状が変わらない場合は、外部配線や電源、接地、周辺機器まで含めて確認する必要があります。
| 主な原因 | 起こりやすい症状 | 確認項目 |
|---|---|---|
| ブラシ・リングの摩耗 | ノイズ増加、瞬断、電圧降下 | 使用時間、総回転数、接点の状態 |
| 摩耗粉・異物の付着 | 接触不良、抵抗変動、短絡 | 内部の汚れ、清掃履歴 |
| 接触圧の変化・軸ずれ | 回転周期に同期する信号変動 | 取付精度、振動、回転軸の状態 |
| 温度・湿度・粉塵 | 接触抵抗の変動、絶縁性能の低下 | 使用環境、ハウジングの保護等級 |
| 電力線と信号線の干渉 | 通信エラー、測定値の乱れ | 回路配置、シールド、接地 |
| 仕様と使用条件の不一致 | 発熱、電圧降下、不安定動作 | 電流、回転数、信号方式、周波数 |
接点の摩耗が進むと摩耗粉が発生し、接触状態が不安定になります。粉塵や湿気が内部へ入り込んだ場合も、接触抵抗や絶縁性能に影響します。また、許容回転数を超えた運転や、想定以上の振動、軸ずれは摩耗を早めます。接点だけでなく、取付状態や使用条件も併せて確認しましょう。
まず、スリップリングが停止しているときと回転しているときで、信号や通信状態に違いがあるかを確認します。回転中だけノイズが増える場合や、一定の回転角度で同じ症状が繰り返される場合は、接点の摩耗や汚れ、偏心などが疑われます。
特定の回転数や温度、負荷で症状が悪化する場合は、その条件も記録しておきましょう。発生条件を整理することで、スリップリング本体と外部要因を切り分けやすくなります。
測定できる環境がある場合は、スリップリングの入力側と出力側で、電圧や信号波形を比較します。入力側ですでにノイズが発生しているなら、電源や周辺機器が原因である可能性があります。出力側だけでノイズが増えている場合は、スリップリング本体や接続部、回転側の配線を確認します。
製品の仕様書や点検手順に従い、接触抵抗、ブラシやリングの摩耗状態、摩耗粉や異物の有無を確認します。設計寿命に近づいている場合や、清掃してもノイズが繰り返し発生する場合は、修理または交換を検討してください。
摩耗粉や汚れが原因と考えられる場合は、メーカーが指定する方法で清掃します。ブラシの摩耗が使用限度を超えている場合は、交換が必要です。指定されていない潤滑剤や洗浄剤を使うと、接点材料や絶縁部品へ悪影響を与えるおそれがあるため、使用しないでください。
微小なアナログ信号や高速通信回路は、大電流回路やノイズ源から離して配置します。スリップリング内部で電力回路と信号回路を分けられるか、回路間にシールドを追加できるかについても、メーカーへ確認しておくとよいでしょう。
Ethernetや差動信号を伝送する場合は、ツイストペアの組み合わせを崩さず、通信規格に対応した製品を使用します。装置側でシールド配線を採用している場合は、スリップリング内部を含めてシールドが途切れない構成にする必要があります。接地方法が適切でないと、グランドループによるノイズが発生することもあるため注意しましょう。
対策を行っても必要な信号品質を確保できない場合は、接点材質や電気的ノイズ、回転数、信号方式、使用環境に合った製品へ見直します。用途によっては、貴金属接点や複数接点構造、信号を非接触で伝送する方式も選択肢になります。
メーカーや取扱会社へ相談するときは、次の情報を整理しておきましょう。
単に「ノイズを小さくしたい」と伝えるだけでなく、現在起きている症状や測定条件、許容できる数値まで共有すると、仕様に合った製品や対策を検討しやすくなります。
スリップリングのノイズは、接触抵抗の変動や接点の摩耗、摩耗粉、使用環境、配線など、さまざまな要因によって発生します。まずは停止時と回転時の状態を比較し、入力側と出力側の信号を測定して、どこでノイズが発生しているのかを切り分けましょう。
接点構造やノイズ特性、メンテナンス方法は製品によって異なります。選定時には、仕様書に記載された条件を確認し、実際の使用環境と照らし合わせることが大切です。
必要な電流・電圧、回路数、信号の種類、許容ノイズ、回転数、寿命、設置寸法を整理しておくと、自社設備に合うスリップリングを探しやすくなります。下記から、スリップリングを取り扱うメーカーと各社の特徴をご確認ください。
製品仕様では、回転中に生じる接触抵抗の変動をmΩで示す場合があります。実際に信号へ現れる電圧ノイズは、信号電流や測定回路によって変わるため、数値だけでなく試験条件も確認してください。
摩耗粉や異物が原因であれば、清掃によって改善することがあります。ただし、接点の摩耗や軸ずれ、配線からの干渉が原因の場合は、部品交換や取付状態、配線の見直しが必要です。
電力と信号を同時に伝送できる製品はあります。ただし、電流・電圧、信号方式、回路配置、シールドの仕様を確認し、電力回路から信号回路への干渉を考慮して選定してください。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。