外径や高さを抑えたコンパクトな設計が特徴の小型スリップリング。軽量で低トルクのものが多く、ロボットアームやドローンといった可動装置への組み込みに特に適しています。
小型スリップリングの主な特徴や用途例、製品例、特殊な要件に対応するためのカスタム方式についてまとめました。
コンパクトな構造の小型スリップリングはスペースに厳しい制約がある装置への組み込みに適しています。ドローンや医療機器などの小型デバイスにおいて、内部空間を浪費することなく必要な機能を実装できる点がメリットです。
回転抵抗を抑える設計が施されていて、低トルクでスムーズな回転を実現できるのも小型スリップリングの特徴です。高速回転を伴う装置でも安定した性能を発揮します。
ドローンやロボットアームのように自重が性能に直結する装置に適しているのが小型スリップリングです。部品が軽くなると、ドローンなら飛行時間が延び、ロボットアームならより重い物を持てるようになります。
サイズの小ささは、慣性モーメント(回転のしにくさ)も小さくなることを意味します。回転の起動・停止を素早く正確に行うことが可能です。監視カメラの高速なパン・チルト動作や、検査装置の精密な位置決めなど、俊敏な動きが求められる用途で特に性能を発揮します。
医療機器の領域では、手術用ロボットや内視鏡装置において小型スリップリングが使われます。
限られたスペースで精密な制御信号を伝送しつつ、可動域を広げられます。小型であるため関節部に組み込みやすいのもメリットです。
産業オートメーション分野では、包装機械、CNCマシン、インデックステーブル、マテリアルハンドリングシステム、ターンテーブルなど、回転を伴うさまざまな自動化装置で、電力供給やリアルタイムの制御信号伝送に貢献しています。
ロボット分野でも小型スリップリングが活躍。ロボットアームやエンドエフェクタ、視覚システム、センサーなど、連続的な動きが求められる箇所で電力や信号を伝送し、ロボットの円滑な動作を支えます。
軸端一体型の小型スリップリング。1億回転までメンテナンスフリー(※使用条件・使用環境に影響を受けます)で使えます。高速データ通信との組み合わせもでき、幅広い用途に導入可能。仕様調整にも柔軟に対応してくれます。
| 製品カテゴリ | 小型・軸端一体型 |
|---|---|
| 軸径/外径 | 10mm/30mm |
| 最大極数 | 14 |
| 電圧 | 100V |
| 許容電流 | 1~3A |
| 通信回路対応の有無 | 〇 |
| 補償導線 | - |
| 許容回転数 | 1200 |
| 回転寿命 | 1億 |
| メンテナンス周期 | メンテナンスフリー |
| 回転方向 | CW-CCW インデックス |
外径φ12mm、全長18.7mmという非常に小さなサイズが特徴のスリップリングです。許容電流は0.1A以下で、4極仕様のモデル(SPM-12-4P-02)のほか、同シリーズには6極仕様や9極仕様のモデルも用意されています。低トルクで回転寿命は2,000万回転以上と長寿命。特殊仕様への調整にも柔軟に対応可能です。
| 製品カテゴリ | 小型 |
|---|---|
| 型式 | SPM−12−□P−02(□内:極数) |
| 形状 | φ12mm×L18.7mm~ |
| 極数 | 4,6,9P |
| 接触抵抗値 | 0.1Ω以下(初期値) |
| 許容電流 | 0.1A以下 |
| 絶縁抵抗 | DC500V,100MΩ以上 |
| 絶縁耐力 | AC500V,1分間 |
| 回転トルク | 0.003N・m以下(約30g−cm以下) |
| 回転方向 | CW−CCW(両方向) |
| 機械的回転角 | 360°エンドレス |
| 許容回転数 | 400rpm以下 |
| 回転寿命 | 2000万回転以上 |
| 使用温度範囲 | −30℃~+80℃ |
| リード線仕様 | 0.055sq テフロン被覆電線 |
| リード線引張強度 | 0.98N以下(100gf以下) |
| ケース材質 | アルミ合金(アルマイト処理) |
| シャフト材質 | ステンレス |
| 軸受 | ボールベアリング(シールドタイプ) |
カプセル型の小型スリップリングがAC6023–6です。6極仕様のモデル(AC6023–6)のほか、同シリーズには12極・18極・24極仕様のモデルがそれぞれ用意されています。精密ボールベアリングと金接点を採用しており、摩擦を抑えた滑らかな回転を実現。金は酸化や腐食に強いので、信号劣化も抑制されます。
| 製品カテゴリ | 小型 |
|---|---|
| 回転速度 | 250 rpm※、連続 |
| 回路数 | 6、12、18または24 |
| リード線長さ | 300、600、900、1,200 mm |
| リード線の太さ・種類 | 28(7/34) 銀めっき銅撚り線、ET型、テフロン®被覆付き |
| 電圧 | DC210 V / AC240 V |
| 許容周囲温度範囲 | -40°C~+80°C |
| 接点材料 | 金 |
| 定格電流 | 1回路当たり2A |
| 絶縁耐力 | AC250 V (60 Hzの場合における各回路とその他の全回路の間の値) |
| 絶縁抵抗 | 1,000 MΩ (DC500 Vの場合) |
| ノイズ | 最高60 mΩ (DC6 V、50 mA、5 rpmの動作条件にて試験した場合) |
※耐用寿命は、回転速度、環境および温度によって異なります。
標準品だけで要件を全て満たせるとは限りません。寸法に極端な制約があったり、高い極数や複合的な回路が求められたり、特殊な環境条件での使用だったりといった場合、カスタム設計が必要となることもあります。
カスタム設計には「フルカスタム」と「セミカスタム」の2方式があり、どちらを選ぶべきかは、自社装置の設計条件や調達要件に応じた判断が必要です。
要求される仕様に合わせて小型スリップリングの構造全体をゼロから完全に新規設計する方式がフルカスタムです。設計の自由度が高く、厳しい仕様にも対応できます。
一方で、新規の設計工数や試作評価が必要となるため、コストが高く、納期も長くなりがちなのはデメリットです。
大量生産を前提とした案件や、他に代替手段がない特殊な用途ではフルカスタムが採用されます。
スリップリングメーカーが既に持っている標準設計や筐体をベースに、内部のリング数や電流容量の組み合わせ、リード線の長さ、コネクタ形状、取付寸法などを調整する方式がセミカスタム。
既存の設計や筐体を転用できるため、開発工数を抑えられます。フルカスタムに比べるとコストが抑えやすく、納期も短縮できるのがメリットです。
高い柔軟性で多様なニーズに応えられることから、近年はセミカスタムを採用するケースが増えてきています。
小型スリップリングは、省スペース設計や軽量化が求められる装置において、電力や信号を安定して伝送できる有効な手段です。医療機器やロボット、産業オートメーションなど幅広い分野で活用されています。
ただし、案件ごとに求められる性能や取り付け条件は異なるため、標準品だけでは対応できないケースもあります。
用途に応じて必要な構造やスペックを見極め、フルカスタム・セミカスタムを含めた選定を行うことが重要です。
このメディアでは、設計者が条件に合う依頼先を見極められるよう、メーカー各社の強みを整理して紹介しています。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。