回転する部分と固定された部分の間で、電力や電気信号を途切れることなく伝達する電気機械部品がスリップリングです。装置の複雑化や多様な使用環境に対応するため、さまざまな形状や機能を持つスリップリングが存在します。
性能を適切に引き出すには、装置の設計や使用環境に合わせたスリップリング選びが大切です。
分類方法自体にもいくつかのタイプがあるスリップリング。以下では、スリップリングの種類について、分類方法ごとに解説していきます。
| 種類 | 特徴 | 強み | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 中空一体型 | 中心穴つき | 電力・信号+流体を同軸化しやすい | シャフト・配管併用機器、ロータリーユニオン併設 |
| 軸端取り付け型 | 軸端に被せるカプセル型 | 省スペース/カスタムしやすい | 限られた設置スペースの装置 |
| 薄型(パンケーキ型) | 薄く扁平なフラット型 | 超薄型(数mm〜数十mm)/耐摩耗性 | 厚み制約が厳しい装置 |
| 水銀フリー | 水銀なし(金属接点) | 低ノイズ/超低接触抵抗/廃棄コスト減 | 食品・半導体などクリーン環境 |
| 防爆型 | 爆発性雰囲気向け | 火花で引火させない設計 | 石油・化学・粉塵・トンネル等 |
| 海洋用 | 海水・高圧水に耐える | 耐腐食/防水・耐圧 | 海洋掘削、水中ロボット、船上レーダー/ソナー等 |
中央に穴が開いており、ケーブルやシャフト、空気や流体の配管などを通せる構造をしているのが中空一体型スリップリングです。
リングやブラシといった動作に必要な部品が全て内蔵されているため、取り付けが比較的容易なのがメリット。設計や組み立ての工数削減に貢献します。
中空一体型は中心の貫通穴を活用し、シャフトや配管、ロータリーユニオン(空気・油・冷却水)を同心配置することも可能です。電力/信号の伝送と流体供給の同軸複合化に適しています。
回転軸の末端に被せるように取り付ける、コンパクトなカプセル形状のスリップリングです。中空タイプのように内部に配線を通す必要がない場合に適しており、省スペースでの設置が可能です。構造がシンプルなため、特定の用途に合わせたカスタマイズ設計がしやすいのも特徴です。
薄型スリップリングは、超薄型フラットスリップリングとも呼ばれます。薄く扁平な形状が特徴です。
リング表面の回路基板には厚い銅層が用いられ、銅メッキと硬質金メッキも施されていて、高い硬度と耐摩耗性を備えています。
狭い空間での使用が求められる装置に適しており、厚さは数mm〜数十mm程度です。
水銀が環境有害物質として規制されている国際的な動向に対応して開発された、水銀を使用しないスリップリングです。
ガリウム合金をはじめとする水銀に近い性質を持つ金属を接点に使用。ノイズの発生を抑え、接触抵抗が非常に低いのが特徴です。
水銀含有製品のような廃棄処理コストが不要で、食品包装機械、充填機、工作機械、半導体製造装置など、クリーンな環境や敏感な信号伝送が求められる産業で利用されます。
可燃性のガスや粉塵が存在する爆発性雰囲気での使用に適した高安全性、高信頼性のスリップリングが防爆型です。筐体内部で発生しうる爆発を封じ込め、内部からの火花が周囲の可燃性物質に引火しないように設計されています。
石油掘削プラットフォーム、粉塵作業場、化学工業設備、鉱山、トンネル工事、スプレー塗装現場、軍事システムなど、安全が極めて重視される危険区域で利用されるスリップリングです。
海水、高圧水、高湿度、粉塵、破片といった過酷な海洋環境に耐え、信頼性の高い性能を維持するよう設計されているのが海洋用スリップリング。海洋グレードのステンレス鋼や特殊な耐腐食コーティング、Oリングやエポキシ樹脂による多層シーリング技術(防水・耐圧性能を高める方法)などにより、塩水腐食や高圧水ジェットに対する優れた耐性を持ちます。
主な用途としては、海洋掘削リグ、水中ロボット(ROV/AUV)、レーダーやソナーなどの船上システム、さらには潮力タービンや産業用洗浄環境などです。
| 種類 | 特徴 | 強み | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 小型スリップリング | 省スペース向け小型 | 低ノイズ・損失・トルク/混合伝送 | 医療機器、ロボット等の小型・高速回転装置 |
| 非接触式 | 接触なしで電力・データ伝送 | 低メンテ/長寿命/高速回転/環境適応性 | 長寿命・高速回転・高信号品質が必要な装置 |
| 大電流対応型 | 高電力を安全に伝送 | 大電流を効率・安全に伝送 | 風力発電、建機の中心回転部、ターンテーブル等 |
小型スリップリングは、ミニチュア、ミニ、コンパクト、マイクロとも呼ばれます。設置スペースが限られた用途向けに設計されているスリップリングです。
低電気ノイズ、低損失、低トルクという特徴を持ち、デジタル信号、アナログ信号、Ethernet信号、電力などの混合伝送にも対応できます。
コンパクトなサイズと効率的な伝送特性の両立も小型スリップリングの特徴。医療機器(スキャン装置、歯科用機械、MRI装置など)、産業機械(風力タービン、包装機器)、ロボット工学(ロボットアーム)といった高速回転をともなう小型の装置で広く使用されるタイプのスリップリングです。
固定部品と回転部品の間で、物理的な接触なしに電力やデータ信号を転送します。ワイヤレススリップリングとも呼ばれます。
誘導結合、静電容量結合、無線周波数(RF)ベースの伝送といった高度な技術を活用することで、従来の接触式スリップリングに内在する摩耗やノイズの問題を解消しました。
非接触構造により、長寿命、メンテナンスの削減、高速回転対応、信号品質の向上、厳しい環境への高い適応性なども実現しています。
回転しながら大量の電流を効率的かつ安全に伝送するよう設計されているのが大電流対応型スリップリングです。単極タイプでは数千~数万A程度、多極タイプでも1極あたり数百アンペアの電流に対応できる製品もあります。
主な用途としては、風力発電装置、エンジンやブレーキの過電流保護、建設機械の中心回転部、ターンテーブル、包装機械、海上クレーン、海底ボーリング用プラットフォームなど。高電力を必要とする産業機械や設備で幅広く採用されています。
スリップリングには、中空一体型・軸端取り付け型・薄型といった構造別の分類、水銀フリー・防爆型・海洋用といった環境や安全性に特化した分類、小型・非接触式・大電流対応型といった性能別の分類があります。
装置のサイズや回転速度、電力・信号要件、使用環境によって適するタイプは異なります。
種類ごとの特徴を理解し、装置の制約や使用環境に合ったスリップリングを選ぶことが、性能を引き出し安定稼働を実現するためのポイントです。
スリップリングを選定する際は、主に「チャンネル数と電流容量」「回転速度」「使用環境」「取り付け方式」の確認が重要です。必要な電力や信号の種類(アナログ・デジタルなど)に合わせて極数を決め、設置スペースや防塵防水性(IP等級)、回転トルクなども考慮に入れて総合的に判断してください。
設置場所の制約に応じて適した形状が異なります。例えば、回転軸の末端に取り付ける場合はコンパクトな「軸端取り付け型」、高さ方向のスペースが狭い場合は「薄型(パンケーキ型)」が有効です。また、配管やシャフトを通す必要がある場合は「中空一体型」が適しています。
はい、環境に応じた特殊なタイプが存在します。例えば、可燃性ガスがある場所では「防爆型」、海水や高圧水にさらされる場所では「海洋用」、クリーンな環境が求められる食品・半導体分野では「水銀フリースリップリング」などが利用されています。
メンテナンス性を重視する場合、物理的な接触がない「非接触式スリップリング」がおすすめです。誘導結合や無線技術を用いることで摩耗やノイズの発生を抑えられ、長寿命かつメンテナンスの頻度を大幅に削減することが可能です。
可能です。「大電流対応型」であれば数千アンペアクラスの電力伝送に対応でき、また多くのスリップリングは電力と信号(Ethernetやアナログ信号など)の混合伝送が可能です。用途に合わせて電力用と信号用のチャンネルを組み合わせた製品を選定してください。
スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。
「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。
余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応。
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。
最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送。
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。