高速通信対応スリップリングの仕組みと選び方

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こちらの記事では、高速通信対応スリップリングについて解説。仕組みや対応している通信規格、信号の品質を維持するための配線や設計、製品を選定する際に確認するべき仕様についてまとめました。

要点
高速通信対応スリップリングで押さえたいポイント
  • 高速通信対応品は、波形を崩さずに伝送するためインピーダンス整合やシールド構造などの専用設計がされています。
  • Ethernetや産業用ネットワークなど通信規格ごとに対応製品が異なるため、自社の通信条件との照合が不可欠です。
  • 通信エラーを防ぐには、ツイストペアやインピーダンスの維持、電力回路との分離、シールドの連続性が重要となります。
  • 選定時は通信規格・速度だけでなく、電圧・電流、回転数、使用環境などの仕様条件を整理して選定しましょう。

高速通信対応スリップリングとは

回転体と固定体の間で電力・信号を伝送する部品

スリップリングとは、回転体と固定体の間で電力や電気信号を伝える回転コネクタのことです。大きく分けてリングとブラシの部品によって構成されており、金属製のリングに固定側のブラシを接触させ、回転を続けつつ給電を行います。

無限回転しない用途だったとしても、ケーブルが動き続けることによって被覆の破損や断線の可能性がありますが、スリップリングを介することによって配線の巻き込みを避けられるため、発電機、産業用ロボット、監視カメラ、風力発電など回転部を持った幅広い装置で使用されています。

高速通信対応品と一般的なスリップリングの違い

電力の供給や接点信号を主な目的としている一般的なスリップリングの場合には、必要な電流を安定して流せることが設計の中心となります。

対して高速通信に対応した製品は、電流はもちろん波形そのものも崩さずに伝えるという点が求められます。そのため、回路配置や伝送経路の特性インピーダンス整合、回路間のシールドや配線分離といったように高速通信を前提とした設計が行われています。ただし、高速通信対応の基準は製品や規格ごとに異なるため、導入にあたっては対応する通信速度や規格について十分に確認することが大切です。

スリップリングで高速通信を行う仕組み

接点を介して高速データを伝送する仕組み

高速通信に対応しているスリップリングも、基本はリングとブラシの摺動接点でデータを伝えます。回転中も接触が途切れないように、貴金属接点や専用のブラシ方式などが採用されています。このことによって、回転中でも安定した物理的接触が保たれ、ノイズをできる限り抑えたデータ伝送を可能としています。

差動信号とツイストペアの関係

これらはEthernetなどの高速通信を電気的なノイズから守るための仕組みです。データを送る際に1つの信号をプラスとマイナス(逆位相)の2種類に分けて同時に送る伝送方式を差動信号と呼びます。この2本の信号線をねじり合わせることによって外部からのノイズの影響を打ち消しやすくする構造をツイストペアといいます。このような構造により高速なデジタル通信を安定させます。

特性インピーダンスを維持する必要性

高速通信を行う場合、特性インピーダンスを維持することは、信号の反射や波形の乱れを防ぐためにも重要であるといえます。インピーダンスが変化する境界では信号が反射して通信が高速であるほど影響が大きくなります。回転接点を持つスリップリングはインピーダンスが乱れやすいため、精密な設計によって信号が劣化しない安定したデータ伝送につなげています。

電力と通信信号を同時に伝送できる構造

1台のスリップリングに電力回路と通信回路を混載する構成の製品も提供されています。動力チャネルと信号チャネルで接点材質や許容電流を分け、回路の配置やシールドなどによって相互干渉を抑えています。

高速通信対応スリップリングで扱われる通信規格

Ethernet

Ethernet(イーサネット)は、有線LANにおける通信規格のひとつであり、コンピューターや通信機器を接続してネットワークを利用できるようになります。Ethernetには10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-Tなどの規格があります。

ケーブルを用いた有線接続であることから安定した通信を行える点が大きな特徴であり、高速通信や大容量のデータのやり取りに向いています。1970年代前半に開発され、現在はネットワーク通信の標準規格として広く普及しています。

※参照元:NTT EAST(https://business.ntt-east.co.jp/content/bizdrive/word/ethernet.html)

産業用Ethernet

産業用Ethernetは、上記で紹介したEthernetのうち産業向けに使用されているものを指します。EtherCAT、PROFINET、EtherNet/IPなどがあり、導入によって製造に関連する特定のデータを正確に送受信したり、動作を実行するために決められた時間内にデータの送受信を行ったりできるようになります。

産業用イーサネットはオフィスなどで使用されている標準的なEthernetと比較すると、高い堅牢性やリアルタイム性能を備えています。

※参照元:NTT EAST(https://business.ntt-east.co.jp/content/bizdrive/word/ethernet.html)

CC-Link IEやMECHATROLINKなどの産業用ネットワーク

産業用ネットワークとは、工場やプラントで稼働している機器間でデータをやりとりするためのネットワーク技術を指します。工場内で使用していることから、リアルタイム性や耐環境性、高信頼性、拡張性といった点が求められる点が特徴です。

通信規格ごとに対応製品を確認する必要がある

たとえば、「高速通信対応」という表記のみでは、自社装置の規格で使用できるかどうか判断ができません。対応速度や準拠する規格、ケーブルカテゴリ、コネクタ形状などはそれぞれの製品ごとに異なります。そのため、カタログに記載されている規格の表記と自社の通信条件を付き合わせて確認する必要があります。

高速通信で通信エラーや信号劣化が起こる原因

高速通信で通信エラーや信号劣化が起こる原因の図解

接触抵抗の変動による波形の乱れ

回転に伴い接触している面の状態や接触圧がわずかに変化すると、接触抵抗の変動が発生します。高速通信の場合には、この変動が波形のひずみや瞬断となって現れることによって、通信エラーの原因になります。

インピーダンスの不整合による反射

インピーダンスとは、交流回路における電流の流しにくさ(交流抵抗)を指します。伝送の特性インピーダンスが途中で変化した場合、その境界にて信号が反射して受信波形が乱れてしまいます。スリップリング内部の配線や接点部にてインピーダンスがずれた場合には反射損失が増えます。また、高速になるほど影響が大きくなります。

ツイストペアの崩れによるノイズ耐性の低下

ツイストペアとは、二本の電線をより合わせて作成したケーブルを指します。電線をよじることによって外部からの電気的なノイズを打ち消しあい、信号の乱れを防ぐ仕組みです。このツイストペアの崩れの影響により、ノイズ耐性が低下することが考えられます。

電力回路や周辺機器からの電磁干渉

モーターやインバーターなど、電力回路や周辺機器からの電磁干渉を受けることがあります。同一のスリップリングで電力と信号を扱う場合に特に影響を受けやすいといわれています。回路装置やシールド、設置状態によって通信エラーの発生頻度が変化します。

回路間で発生するクロストーク

クロストークとは、隣接する導体に信号が移る現象です。高密度に回路を並べているスリップリングの内部ででは、回路間の電磁結合が発生しやすいとされています。クロストークは、イーサネット信号、ビデオ信号、センサー データ、その他の通信信号などの高速または高周波信号を送信するスリップリングで特に見られます。

回転数・配線長・使用環境など仕様条件の不一致

許容回転数を超えた運転や想定以上の振動・横ずれ、湿度・温度・粉塵などの環境条件は、摩耗や接触抵抗の変動を早めるケースがあります。配線長が規格の想定を超える場合にも減衰が増えることになります。このように、仕様と実際の使用条件がずれている場合には、発熱や不安定動作として現れます。

スリップリングで高速通信を安定させるための対策

通信規格に対応したスリップリングを使用する

装置で使用する通信規格と速度に対応した製品を選択します。規格準拠品であれば、規格ケーブルでのダイレクト接続ができる製品もあることから、端末処理に起因するトラブルを減らせます。

ツイストペアの組み合わせを維持する

ツイストペアの組み合わせを維持することも大切なポイントといえます。ペアが混ざると差動によるノイズ相殺が働かなくなってしまいます。

ケーブルとスリップリングのインピーダンスを合わせる

装置側ケーブルの差動インピーダンスと、スリップリング側の伝送路を揃えることによって、反射を抑えていきます。指定カテゴリのケーブルを使用し、変換や中継を挟むといったケースでも、インピーダンスの崩れがないかどうかを確認します。

シールドを伝送経路全体で連続させる

装置側にてシールド配線を採用しているケースでは、スリップリング内部を含めてシールドが途切れない構成とする必要があります。もし途中で途切れてしまうと、その区間がノイズの侵入口になるためです。

コネクタ・接地・外部配線まで含めて確認する

スリップリングを交換しても症状が変わらないケースについては、外部の配線や電源、設置、周辺機器までを含めての確認が必要となります。たとえば設置方法が適切ではない場合、グランドループによるノイズが発生するケースもあります。コネクタの結線や固定状態もあわせて点検を行ってください。

高速通信対応スリップリングの選び方

通信規格と必要なデータレート

たとえばEthernet、産業用Ethernet、CC-Link IEなど、使用する通信規格と必要となるデータレートを確認します。同じEthernetだったとしても、100Mbpsまでの製品と1000BASE-T対応の製品といったように種類が分かれているため、規格名と速度の双方を仕様書にて確認することが必要となります。

電圧・電流・回路数

動力側の電圧・電流と必要な信号回路数を整理しておきます。製品により動力チャネルと信号チャネルの許容量が分かれています。例として、「動力側230V AC/DCで最大25A、信号側48V AC/DCで最大2A、最大20チャネル」といった仕様があります。

最大回転数と連続回転の可否

許容回転数は製品によって異なります。連続回転か間欠・インデックス動作か、1日あたりの回転数はどれくらいなのかを整理した上で、実際の使用条件に余裕を持って収まる製品を選択します。

中空型・軸端型などの取付方法と寸法

形状は、回転軸に取り付ける中空一体型と、軸の先端に取り付けを行う軸端一体型に分けられます。このような取り付け方法に加えて、本体外径や軸径、内径、全長といった寸法についても確認を行った上で選定します。

温度・湿度・粉塵・振動などの使用環境

たとえば−35℃〜+85℃、最大IP65といった仕様が示される製品もありますので、温度・湿度・粉塵・振動などの使用環境を確認しておくことも重要です。設置する環境に合った製品を選択します。

電気的ノイズと動的接触抵抗

仕様書に記載されている電気的ノイズや動的接触抵抗は、回転中の接触抵抗変動を示す指標となっています。数値の確認はもちろん、試験条件の確認も行い、自社の信号回路で許容できる範囲かを判断することも大切です。

寿命とメンテナンス方法

回転回数で示される寿命やメンテナンスについてもあらかじめ確認しておきます。製品によっては「長いメンテナンスサイクルと長寿命」といった部分を特徴としているものもあります。

カスタマイズ対応と通信試験の可否

標準品で必要とする条件を満たせないケースについては、カスタマイズ対応の可否について確認しておきます。また通信試験が可能かどうかも事前に相談しておくことがおすすめです。

まとめ
通信規格と使用条件に合った製品を選ぶ

高速通信対応スリップリングにおける通信エラーや信号劣化は、接触抵抗の変動やインピーダンスの不整合、電磁干渉など多様な要因で発生します。不具合が生じた際は、停止時と回転時の比較や外部配線を含めた伝送経路全体の点検を行い、原因を正しく切り分けることが重要です。

製品ごとに対応する通信規格やデータレート、インピーダンス整合、シールド構造などの設計仕様は異なります。「高速通信対応」の表記だけで判断せず、自社の通信条件や動作環境に適合しているかをしっかり確認しましょう。

通信規格・速度、電圧・電流、回転数、設置寸法、耐環境性などの条件をあらかじめ整理しておくことで、自社装置に合うスリップリングをスムーズに選定できます。下記から、スリップリングを取り扱うメーカーと各社の特徴をご確認ください。

高速通信対応スリップリングに関するよくある質問

A.

Ethernetは高周波信号を扱うため、インピーダンス整合や接触抵抗の安定性、ノイズ・クロストーク対策などが求められます。Ethernet対応として設計された製品であるかを仕様で確認するか、メーカーへ対応可否をご確認ください。

A.

電力と信号を同時に伝送できる製品は提供されています。ただし、電流・電圧や信号方式、回路配置などを確認し、電力回路から信号回路への干渉を考慮した「電力+高速通信対応」設計の製品を選定することが推奨されます。

A.

まず停止時と回転時で通信状態に違いがあるかを確認します。回転中のみ悪化する場合や特定角度で症状が出る場合は、接点の摩耗や汚れが疑われるため、回転数や温度・負荷などの条件を記録しながら原因を切り分けてください。

A.

通信規格や速度、回転数、電圧・電力、寸法、使用環境などの基本仕様を整理して伝えます。さらに現在発生している症状や測定条件、許容ノイズ・接触抵抗値まで具体的に共有すると、適した製品の検討がしやすくなります。

まとめ

高速通信に対応したスリップリングは、高速な信号波形を崩さずに伝えるという点を重視している点が特徴といえます。そのため、接点構造や材料、配線、シールドなどを含めて通信品質を維持できるように設計が行われています。

対応規格はEthernetから産業用Ethernet、CC-Link IEやMECHATROLINKまで幅広く、対応速度は製品ごとに異なります。製品を選択する際には、まずは自社で必要とする条件を整理した上でメーカーに相談することがポイントです。

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他社ではフルカスタム
となる仕様でも

短納期・低コスト
協栄電機
協栄電機公式サイト画像
画像引用元:協栄電機公式HP(https://www.kyoeidenki.jp/)
代表的な
スリップリングの型
  • 中空一体型
  • 中空分離型
  • 軸端一体型
協栄電機画像
特注級の要件を
セミカスタムで対応できる

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。

ノイズ対策・寸法調整も
1台から対応可能

「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

計測向けの軽量・
低トルク仕様を

標準品でラインナップ
遠藤工業
                           遠藤工業公式サイト画像
画像引用元:遠藤工業公式HP(https://www.endo-kogyo.co.jp/japanese/product/slipring/index.html)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • 軸型
  • 中空型
  • SR型
遠藤工業公式サイト画像
小型計測機器向けを
標準品で提供

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。

計測精度を損なわない
軽量・低トルク仕様

余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

数百Aの大電流とGb/s級の
データを伝送できる

大口径を提供
日本ムーグ
                           日本ムーグ公式サイト画像
画像引用元:日本ムーグ公式HP(https://www.moog.co.jp/)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • コンパクトタイプ
  • 大型
  • 中空型
日本ムーグ公式サイト画像
CTガントリにそのまま収まる
内径1,397mmの大口径サイズ

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。

Gb/s級画像データを
同軸で一体伝送できる
数百Aの大電流対応

最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。

     

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