スリップリングとロータリーコネクタの違い

目次
全て表示

回転する装置に電力や信号を送る際、ケーブルを直接つなぐと、回転によって配線がねじれ、断線するおそれがあります。こうした問題を防ぐために使われるのが、スリップリングやロータリーコネクタなどの回転接続部品です。

どちらも固定側と回転側を電気的につなぐ部品ですが、「ロータリーコネクタ」が指す範囲はメーカーによって異なります。スリップリングを含む回転接続用コネクタの総称として使われることもあれば、液体金属式など、特定の接点方式を指すこともあります。

本記事では、一般的なブラシ摺動式スリップリングと、液体金属式・転動式などのロータリーコネクタを取り上げ、構造や特徴、選び方の違いを解説します。

要点
スリップリングとロータリーコネクタを比較する前に
  • どちらも、固定側と回転側の間で電力や信号を伝える回転接続用の部品です。
  • 一般的なスリップリングでは、ブラシをリングに接触させる摺動接点が使われます。
  • ロータリーコネクタには、液体金属式や転動式、特殊環境向けなど、さまざまな構造があります。
  • 製品名だけで判断せず、接点方式や電気仕様、回転条件、使用環境まで確認することが大切です。

スリップリングとロータリーコネクタの比較表

スリップリングとロータリーコネクタの中には、名称だけでは区別しにくい製品もあります。以下は、一般的なブラシ摺動式スリップリングと、液体金属式・転動式などのロータリーコネクタを比べた目安です。

スリップリング ロータリーコネクタ
代表的な接点方式 ブラシとリングによる摺動接点 液体金属式、転動式など。製品によっては摺動接点も使われる
摩耗 ブラシとリングが接触した状態で滑るため、摩耗が生じる 接点方式によって異なる。液体金属式では封止部、転動式では接触部の仕様確認が必要
ノイズ・接触抵抗 接点材質、接触圧、回転数、信号の種類などに左右される 低ノイズや低接触抵抗を特徴とする製品がある
多極・複合伝送 多極化や、電力・信号・通信を組み合わせた設計に対応する製品が多い 対応できる極数や伝送内容は、製品方式によって異なる
サイズ・電流容量 極数や電流容量が増えるほど、大型化しやすい 低い接触抵抗を生かし、大電流用でも小型化した製品がある
メンテナンス 摩耗粉の清掃やブラシ交換が必要になる場合がある メンテナンスフリーを掲げる製品もあるが、方式ごとに寿命や点検条件の確認が必要
使用環境 防塵・防水、真空、高温など、用途に応じた多様な仕様がある 液体金属、封止材、接点材質の影響を受ける。真空・高温向けに設計された特殊製品もある
カスタマイズ 多極、中空、大電流、信号混在などの特注設計に対応しやすい 標準品を中心とする方式と、用途に合わせて設計できる方式がある

同じ名称で販売されていても、内部構造や性能が同じとは限りません。比較表だけで決めず、メーカーの仕様書で接点方式、許容回転数、寿命、使用温度などを確認しましょう。

スリップリングとロータリーコネクタの違いを解説

スリップリングとロータリーコネクタの違いがわかる図解

「ロータリーコネクタ」の意味はメーカーによって異なる

ロータリーコネクタは、回転側と固定側を電気的につなぐ部品を広く表す名称です。メーカーによっては、スリップリングを「回転コネクタ」と説明しています。ハヤシレピックでも、スリップリングを電力や信号を伝達できる回転コネクタと定義しています。

一方、同社の技術解説では、固体金属の摺動接点を使うスリップリングと、液体金属式のロータリーコネクタを区別しています。グローブ・テックでは、スリップリングと特殊用途回転コネクタを「回転接続用コネクタ」の下位分類として掲載しています。

製品を比較する際は、名称だけでなく、ブラシ摺動式、液体金属式、転動式といった接点方式まで確認する必要があります。

接点の構造と通電方式が異なる

一般的なスリップリングは、回転軸と一緒に回るリング状の電極と、固定側に取り付けられたブラシ状の電極で構成されています。ブラシをリングに押し当て、回転中も導通を保つ仕組みです。

液体金属式ロータリーコネクタでは、回転側と固定側の間に、水銀やガリウム合金などの液体金属を介在させて通電します。接触抵抗を抑えやすい方式ですが、液体を保持する封止部や使用温度、材料の特性を確認しなければなりません。

このほか、ヒサワ技研の製品のように、ローラーベアリングに似た転動接触によって通電する方式もあります。液体金属を使わず、一般的な摺動式とも異なる構造です。

摩耗とメンテナンス方法が異なる

ブラシ摺動式スリップリングでは、ブラシとリングが擦れ合うため、使用するうちに接点が摩耗します。摩耗粉がたまると、ノイズや短絡の原因になることがあり、定期的な清掃やブラシ交換が必要な製品もあります。

液体金属式では、ブラシとリングが擦れ合うことによる摩耗はありません。ただし、液体金属を閉じ込める封止部の状態や、漏洩リスクを確認する必要があります。転動式や水銀フリー方式には長寿命やメンテナンスフリーを特徴とする製品もありますが、実際の寿命は回転数、温度、振動、負荷などによって変わります

ノイズと接触抵抗の傾向が異なる

回転中に接触状態が変わると、接触抵抗の変動や電気ノイズが生じます。ブラシ摺動式スリップリングの性能は、ブラシとリングの材質、接触圧、回転数、信号レベルなどに左右されます。

液体金属式や転動式のロータリーコネクタには、接触抵抗の低さや低ノイズを特徴とする製品があります。微小なセンサー信号、熱電対、高周波信号などを扱う場合は、接触抵抗の変動値、許容ノイズ、対応周波数まで確認してください。

多極化・サイズ・伝送内容に違いがある

スリップリングでは、通常、1組のリングとブラシが1回路に対応します。極数が増えるほど電極や配線も増えるため、本体は大きくなる傾向があります。一方で、電力、アナログ信号、デジタル信号、通信を1台にまとめやすい点が特徴です。

液体金属式ロータリーコネクタは、接触抵抗の低さを生かし、大電流用でも小型化できる場合があります。ただし、対応する極数や電流容量、信号の種類は製品ごとに異なります。複数の信号や通信を同時に扱う場合は、チャンネル間の絶縁やノイズ対策も確認しましょう。

使用できる環境と材料が異なる

回転接続用コネクタを選ぶ際は、温度、湿度、回転数、振動、真空、防塵・防水性などを確認します。一般的なスリップリングにはさまざまな構造や材質があり、設置環境に合わせてハウジングや接点材を選べます。

液体金属式では、使用する金属の凝固点、封止材、取付方向などが使用条件に影響します。水銀を使う製品では、適用される規制、社内の化学物質管理基準、廃棄方法も確認が必要です。水銀フリー製品であっても、ガリウム合金式、固体接点式、転動式では特性が異なります。

真空や高温で使う場合も、「ロータリーコネクタ」という名称だけで候補から外す必要はありません。グローブ・テックでは、低アウトガス材を使った真空用や、耐熱材を使った高温用のロータリーコネクタを案内しています。

スリップリングとロータリーコネクタはどちらを選ぶ?

必要な性能を満たせるかどうかは、製品名ではなく、接点方式と個別の仕様で決まります。電気仕様、機械条件、使用環境、保守条件を整理してから、候補を絞り込みましょう。

スリップリングが選択肢になりやすいケース

次のような条件がある場合は、スリップリングを候補に入れて仕様を確認します。

  • 電力と複数種類の信号を1台で伝送したい
  • 多極化したい
  • Ethernetなどのデータ通信に対応したい
  • 回転軸を通す中空形状が必要
  • 取付寸法や配線方法を細かく指定したい
  • 接点の清掃やブラシ交換を保守計画に組み込める

多極、中空、大電流、高速通信など、複数の条件を同時に満たせない場合もあります。優先順位を決めたうえで、実現できる組み合わせをメーカーに確認してください。

ロータリーコネクタが選択肢になりやすいケース

次のような条件がある場合は、液体金属式、転動式、特殊環境向けなどのロータリーコネクタを比較します。

  • 接触抵抗の低さを重視する
  • 微小信号を扱うため、回転中のノイズを抑えたい
  • 限られたスペースで大電流を通電したい
  • ブラシやリングの摺動摩耗を避けたい
  • 既存の水銀式ロータリーコネクタを水銀フリー製品へ置き換えたい
  • 真空、高温、高周波などの特殊条件に合わせて設計したい

ただし、すべてのロータリーコネクタがこれらの条件を満たすわけではありません。液体金属の種類、接点方式、封止構造、取付方向、対応温度を製品ごとに確認してください。

メーカーへ相談する前に整理したい仕様

問い合わせ時に次の情報を用意しておくと、標準品で対応できるのか、特注設計が必要なのかを判断してもらいやすくなります。

  • 回路ごとの電流・電圧
  • 電力用・信号用それぞれの極数
  • アナログ、デジタル、Ethernet、高周波などの信号・通信方式
  • 最大回転数と、連続回転・間欠回転の別
  • 必要寿命または想定総回転数
  • 温度、湿度、振動、真空、防塵・防水などの使用環境
  • 外径、全長、中空径、取付方法
  • 許容できる接触抵抗、ノイズ、回転トルク
  • 点検周期や部品交換の可否
  • 使用を避けたい材料と、必要な適合規格

スリップリングとロータリーコネクタを取り扱う国内企業

スリップリングやロータリーコネクタの取り扱い、設計、製造を行う国内企業を紹介します。掲載順は、製品や企業の優劣を示すものではありません。希望する仕様に対応できるかどうかは、各社へお問い合わせください。

協栄電機株式会社

協栄電機公式サイトのキャプチャ画像
画像引用元:協栄電機公式HP
https://www.kyoeidenki.jp/

ロータリーコネクタ・スリップリング製品の特徴

協栄電機は、スリップリングの開発から設計、加工、組立、販売までを一貫して手がける企業です。中空一体型、中空分離型、軸端一体型などのスリップリングに加え、水銀フリーロータリーコネクタも取り扱っています。

水銀フリーロータリーコネクタとして、有接点方式や液体ガリウム合金方式などを掲載しています。標準品だけでなく、セミカスタムやフルカスタムにも対応しています。

会社概要

会社名 協栄電機株式会社
所在地 大阪府豊中市大島町2丁目4番3号
事業内容 電気機器製造・販売
公式サイト https://kyoeidenki.jp/
※参照元:協栄電機公式HP
https://www.kyoeidenki.jp/

株式会社グローブ・テック

グローブ・テック公式サイトのキャプチャ画像
画像引用元:グローブ・テック公式HP
https://www.globetech.co.jp/products/rotary/slip-rings/

ロータリーコネクタ・スリップリング製品の特徴

グローブ・テックは、産業用の特注コネクタを開発・設計・製造する企業です。回転接続用製品として、ブラシとリングを使う特注スリップリングのほか、真空用、高温用、高周波信号用などの特殊用途回転コネクタを案内しています。

スリップリングでは、大電流、多極、中空、ケース付き、セパレート型などのカスタム設計に対応しています。特殊用途回転コネクタについても、環境温度や材質、真空中のアウトガスを踏まえた開発提案を行っています。

会社概要

会社名 株式会社グローブ・テック
所在地 東京都日野市日野台1丁目13-21
設立 1993年9月16日
事業内容 産業用特注コネクタの開発・設計・製造、海外製電気部品・製品の輸入・販売
公式サイト https://www.globetech.co.jp/
※参照元:グローブ・テック公式HP
https://www.globetech.co.jp/

ヒサワ技研

ヒサワ技研公式サイトのキャプチャ画像
画像引用元:ヒサワ技研公式HP
https://www.hisawagiken.jp/

ロータリーコネクタ・スリップリング製品の特徴

ヒサワ技研は、回転、真空、大電流、高電圧など、特殊な使用条件に対応するコネクタを設計・開発しています。回転接続用製品には、同社独自の遊星運動方式が採用されています。

同社の転動式製品は、ローラーベアリングに似た構造で、接点を転がしながら通電します。水銀は使用していません。標準品に加え、大電流、多極、微小信号、高周波などの要望に応じた設計・製作にも対応しています。

会社概要

会社名 株式会社ヒサワ技研
所在地 東京都大田区仲六郷4-32-6 innoba大田 401号室
設立 2010年7月
事業内容 スリップリング、ロータリーコネクタ、特殊コネクタの設計・開発
公式サイト https://www.hisawagiken.jp/
※参照元:ヒサワ技研公式HP
https://www.hisawagiken.jp/

nbs株式会社

nbs株式会社公式サイトのキャプチャ画像
画像引用元:nbs株式会社公式HP
https://nbs-grp.com/

ロータリーコネクタ・スリップリング製品の特徴

nbsは、大電流、高電圧、耐熱などに対応する特殊コネクタを取り扱う企業です。営業品目として回転接続用コネクタを掲げ、ロータリーコネクタやスリップリングに関する技術サポートを行っています。

公式カタログでは、国内外の協力メーカーと連携し、顧客の要望に応じたコネクタを設計・製造すると説明しています。具体的な仕様や生産体制を確認する際は、対象製品の設計・製造範囲を個別に問い合わせるとよいでしょう。

会社概要

会社名 nbs株式会社
所在地 神奈川県伊勢原市歌川3丁目2番地5号
設立 1997年10月
事業内容 特殊コネクタ、回転接続用コネクタなどの設計・製造・輸入
公式サイト https://nbs-grp.com/
※参照元:nbs公式HP
https://nbs-grp.com/
まとめ
製品名ではなく構造と使用条件を比較する

スリップリングとロータリーコネクタは、どちらも固定側と回転側の間で電力や信号を伝える部品です。両者を名称だけで明確に分けることは難しく、実際の違いは、ブラシ摺動式、液体金属式、転動式などの接点構造に表れます。

多極化や複数信号の伝送を重視する場合はスリップリング、低い接触抵抗や摺動摩耗の低減を重視する場合は、液体金属式・転動式ロータリーコネクタが候補になります。ただし、対応できる範囲は製品ごとに異なります。

電流・電圧、極数、信号の種類、回転数、寿命、設置寸法、使用環境を整理し、複数の方式をメーカーに提示して比較することが、自社設備に合う製品を選ぶ近道です。

スリップリングとロータリーコネクタの違いに関するよくある質問

A.

メーカーや業界によって、用語が指す範囲は異なります。スリップリングを回転コネクタの一種とする場合もあれば、ブラシ摺動式スリップリングと液体金属式ロータリーコネクタを分ける場合もあります。名称ではなく、接点方式を確認してください。

A.

電力と信号を同時に伝送できる製品があります。ただし、対応する電流、極数、信号方式、周波数は製品ごとに異なります。電力線が信号線に与えるノイズの影響も含めて、仕様を確認しましょう。

A.

ガリウム合金式、有接点式、転動式など、水銀を使わない製品があります。ただし、「水銀フリー」という表示だけで選ぶのではなく、接点材料、構造、使用温度、取付方向、寿命まで確認してください。

A.

メンテナンスフリーを特徴とする製品はあります。ただし、想定寿命は回転数、通電条件、温度、振動などに左右されます。メンテナンスフリーとして使える条件と、寿命に達した後の交換方法を確認しておきましょう。

A.

電流、電圧、極数、信号の種類、回転数、必要寿命、設置寸法、使用温度を用意します。真空、振動、防塵・防水、使用禁止材料などの条件がある場合は、最初の問い合わせ時に伝えてください。

RECOMMENDED
【メーカーの強みから選ぶ】
スリップリング
メーカー3選

スリップリングの選定では、組み込む装置の種類や用途によって特有の要件があります。
ここでは、現場で特に求められる条件に対して強みを持つ3つのメーカーを紹介します。

他社ではフルカスタム
となる仕様でも

短納期・低コスト
協栄電機
協栄電機公式サイト画像
画像引用元:協栄電機公式HP(https://www.kyoeidenki.jp/)
代表的な
スリップリングの型
  • 中空一体型
  • 中空分離型
  • 軸端一体型
協栄電機画像
特注級の要件を
セミカスタムで対応できる

フルカスタムでしか実現が難しかった、内径φ50mmクラスの中空軸に、大電流(各極数十A級)と1,000Mbpsの高速通信の混載要件にセミカスタムで対応。
短納期かつ低コストで、性能を実現できる。

ノイズ対策・寸法調整も
1台から対応可能

「中空型」「軸端型」など既存のセミカスタム品ベースの設計でゼロからの専用設計が不要。
ノイズ対策や寸法調整といった要件を反映でき、試作1台からの小ロット発注にも国内一貫生産体制でスピーディに対応。

計測向けの軽量・
低トルク仕様を

標準品でラインナップ
遠藤工業
                           遠藤工業公式サイト画像
画像引用元:遠藤工業公式HP(https://www.endo-kogyo.co.jp/japanese/product/slipring/index.html)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • 軸型
  • 中空型
  • SR型
遠藤工業公式サイト画像
小型計測機器向けを
標準品で提供

外径φ22〜30mmクラスに適合し、0.3Aの通信用回路を最大18極まで選べる小型シリーズを標準品でラインナップ。
CC-Link規格準拠のモデルもあり、規格ケーブルでのダイレクト接続が可能。

計測精度を損なわない
軽量・低トルク仕様

余分な慣性や抵抗を抑え回転機構に組み込んでも測定誤差が生じにくい軽量・低トルク設計。
質量26g・起動トルク0.005N·mのモデルなどがあり、回転ステージや治具でも精度を維持できる。

数百Aの大電流とGb/s級の
データを伝送できる

大口径を提供
日本ムーグ
                           日本ムーグ公式サイト画像
画像引用元:日本ムーグ公式HP(https://www.moog.co.jp/)
                       
代表的な
スリップリングの型
  • コンパクトタイプ
  • 大型
  • 中空型
日本ムーグ公式サイト画像
CTガントリにそのまま収まる
内径1,397mmの大口径サイズ

CTなどの大型医療装置のフレームを貫通できる内径1,397mmに対応
限られた設計空間にも組み込めるため、既存の筐体寸法の制約内でも回転部の構成が可能。

Gb/s級画像データを
同軸で一体伝送できる
数百Aの大電流対応

最大1,000V・300Aの電力と、合計80Gb/s超えの画像データを、1台で同時伝送
CTスキャナのX線管や冷却系を支えながら、装置内部の配線を簡素化できる。

     

【メーカーの強みから選ぶ】

スリップリング
メーカー3選